【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
(けど、きっと大したことはないわね)

 疲れがたまったぐらいならば、日が経てば自然と治るはずだ。私はそう判断し、クレアとマリンに「大丈夫」と告げた。浮かべたぎこちない笑みが、二人にどう映ったのかは分からない。しかし、二人とも「……何かあれば、何なりと」と言って深入りはしてこない。それが、今の私にはとてもありがたかった。

「朝食は、どうなさいますか? 少しお疲れなのでしたら、こちらに運ばせますが……」
「いいえ、何かあったと思われるのは嫌だから、食堂で摂るわ」

 マリンは私の髪の毛を櫛で梳き、寝癖を直しながらそんな提案をしてくれる。だけど、ほら。普段と違う行動をとれば、無駄な心配をかけてしまう。私はそれが嫌だったので、その提案も拒んだ。そもそもな話、疲れがたまったぐらいで甘えることは、嫌だった。

「シェリル様。本日のお召し物は何にされますか?」
「何でもいいわ。お任せで」

 クレアにそう問いかけられ、私はそう端的に答える。クレアとマリンのセンスは素晴らしい。むしろ、私よりも良いと思う。だから、衣装については二人に任せるのが私の常だった。……まぁ、二人はいつも私に一度は訊いてくるのだけれど。

「では、こちらにしましょうね。本日はダンスレッスンの予定もないですし、ラフな格好にしましょう」
「えぇ、お願い」

 寝間着からワンピースに着替え、私は大きく伸びをする。……けど、やはり頭痛は治まる気配がない。……何か、お薬を貰うべきかしら? 頭痛薬ぐらいならば、あまり心配されないと思うけれど……。
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