きみのためならヴァンパイア

◆


間宵紫月は、スタスタと器用に歩いていく。

避けるそぶりなんてないのに、水溜まりひとつ踏みやしない。


対して私は、着いていくのに精一杯で水溜まりなんて気にしていられなかった。

そもそも全身びしょ濡れだから気にする必要もないんだけど。


「もう少し静かに歩けよ」

「し、仕方ないでしょ、あなたが歩くの早いんだもん!」

「は? 知るか」


そうは言いつつも、どことなくスピードダウンしてくれた気がする。

本当にほんの少しだし、気のせいかもしれないけど。


「もう日も暮れてんだぞ? 夜になったら虫が出るだろうが」


……たしかに。

ヴァンパイアたちは、日光が苦手だ。

だから夜になると外出が増えると、父親から教わった。


「わかった、急ぐ……」


でも、ヴァンパイアが出たとしても、間宵紫月からすれば怖くないんじゃないか。

さっきと同じようにすればいいだけだ。


……というか結局、さっきのアレはなんだったんだろう。

ヴァンパイア男に何を飲ませて、どうやって言うことを聞かせたのか、まだ判明していない。


それに、間宵紫月は気になることも言ってた。

自分のことを『てめーらのトップ』とか、なんとか。


「ね、ねぇ! さっき話してた、トップってどういう意味――」


私の言葉の途中で、突然、間宵紫月が立ち止まる。

突然止まるから思わず躓(つまず)いて、彼の背中に顔をぶつけた。


「着いた」

「え? ここって……」

「俺の家」


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