友達以上、恋人未満。
「苑田 乃彩です、よろしくお願いします」

 紫音からバイトを紹介された私は店長との面接をするや否や即採用。

 採用された週の土曜日、私は初の勤務日を迎え、同じ時間帯で働く仲間に挨拶をする。

「苑田さんは斑鳩くんの友達で、基本彼と同じ勤務になるから。斑鳩くんは勿論だけど、みんな苑田さんに色々教えてあげてね」
『はい』

 店長の言葉に紫音を含めた三人が返事を返すと、各々仕事に取り掛かる。

「それじゃあ乃彩、まずはレジ打ちから教える。今日は基本俺の横に付いて覚えて」
「分かった」

 バイトをしたことがない私は全てが初めてで緊張していたのだけど、紫音が居るというだけで心強く、どんなことでも頑張れる気がした。

「乃彩ちゃん覚え良いね。若い子が入ってくれて本当に助かるわ」

 お昼が過ぎた頃、紫音は頼まれた仕事があると言って私より少し遅れて休憩に入るらしく、一足先に休憩に入った私は共に休憩に入った吉岡(よしおか)さんという50代のパートの方と遅めのお昼ご飯を食べていた。

「いえ、そんな。紫音の教え方が良いから出来てるだけなので……」
「ああ、紫音くんって面倒見良いし、教え方も上手いのよね。彼と友達なんでしょ?」
「はい、幼馴染み……みたいなもので」
「そうなの。いいわねぇ、彼みたいなイケメンと仲良しなんて」
「あはは。紫音、モテるけど女子には興味ないみたいで……」
「そうなのね。まあ言われてみれば、よくお客さんに言い寄られたりするけど、軽くあしらってることが多いわね」
「そうなんですか?」
「まあ、勤務中だしね。夜勤帯にも紫音くん並にモテる男の子がいるんだけど、その子は勤務中にも関わらずお喋りが多くてね。紫音くんを見習って欲しいくらいよ」
「そうなんですね」

 紫音が学校以外でもモテるのは分かってるけど、相変わらず女の子に興味を示さないようで一安心。

 だけど、そんな話を聞いた休憩後、再び紫音とレジに立っていた私はその現場を目の当たりにすることとなる。
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