友達以上、恋人未満。
「そ……そんなの分かってるって! っていうか、紫音の方こそ私のこと好きにならないでよね?」
「ならねーよ」
「分からないよ? 私の魅力に惹かれるかもしれないし?」
「言ってろ」
「何よ? 全くもう、嫌になっちゃう」

 いつものように言い合いをしているけど、本当は今にも泣きそうなくらい悲しかった。

 私と長く付き合っていたい、その言葉は嬉しかった。

 それ程までに私を大切な存在だと思っていてくれているってことだから。

 だけど、それはあくまでも『友達』としてってこと。

 私とは、友達以上の関係になる気は無いってハッキリ言われてしまったのと同じなんだから。

 見込みのない恋。

 それでも、私は紫音が好き。

 この際、傍に居られるなら友達のままでも構わない。

 本当の恋人になれることが無いのなら、せめて、偽りの恋人でもいいから、紫音との疑似恋愛を楽しみたい。

「ねえ紫音」
「ん?」
「一応、嘘でもカレカノになったんだからさ、一度デートでもしてみない?」
「は?」

 私の突拍子のない発言に目を丸くして驚く紫音。

「まあデートって言っても、普通に出掛けるって感じだけどさぁ、少しは恋人っぽいことしないとやっぱり不自然じゃない? だから、どうかなって」

 そんなのは建前で、それを口実にもっと紫音と一緒に居たい。ただ、それだけだった。

 無理かなと思っていたけど、私の言葉に少し悩む素振りをした紫音。

「……まあ、それくらいしておくのもいいかもな。それじゃあ今週の日曜とかどお? 俺、ちょうどバイト休みなんだよね」
「日曜? 大丈夫! 全然空いてる!!」

 そして、納得した彼が早速日曜日なら都合が良いと誘ってくれたので、私は嬉しくて空いていることをアピールする。

「何なの? すげー必死過ぎ。まあいいや、そんじゃ日曜はデートってことで」
「うん!」
「何するか決めといて。俺は特に希望ないから」
「分かった!」


 こうして私たちは付き合っているフリをすることになり、周りに嘘がバレないように恋人らしいこととして、週末にデートをすることになったのだった。
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