死神に恋した私
第1章

故意の自覚

氷川澪(ひかわ みお)は、学校で5人グループで仲良くしていた。彼女たちグループは本当に仲が良くて、いつも一緒に行動していた。ある日の昼ごはんでも、
「今度のスイーツパラダイス楽しみだね!」
「まーた友奈たくさん食べるでしょ」
「うん!」
そんな他愛の無い談話をするほどだ。澪も心から楽しみにしていたほどだった。
けれども、彼女には、5人でいることに引っ掛かりを覚えることがあった。それは、
「誰の通知がなった?」
「あ!友奈の!」
「誰からー?」
「何か……隣のクラスのちょっぴり、やばい人」
「ブロックしないの?」
「え〜ちょっと、可哀想だからできない」
友奈だった。彼女は5人でいる時にはとっても可愛らしいのだが、澪と2人っきりになると、
「このリップめちゃめちゃいいんだよね〜」
「ハッ、これの偽物でしょどうせ。友奈そういうの無理〜」
「本物だけどね」
「え、見せて?やっぱえせじゃんウケる〜!」
何処かトゲを感じるのだ。しかし、5人でいる時には大丈夫。そう確信していた。

「お待たせ!」
5人で集まって、スイーツパラダイスにきた。あれを食べたいだの、これを食べたいだの。各各の食べたい物を盛っていった。
「幸菜(ゆきな)ー、ピスタチオのスイーツあるよ!」
「え、食べたい!」
澪はその中で、少し特殊だった。彼女が好きな物は、カレー。少し大きめのさらに乗せると、すぐさま友奈が指を指した。
「澪何してんの!そんなのダメじゃん!」
だが全く気にしていない様子の澪は平静だった。
「いーの。私はこれが好きなの」
それに、澪は他にも気になるケーキなどを持っていた。気にしないと決めた澪は、カレーを頬張った。

5人でいる時間はあっという間に過ぎて、日が傾き始めた。でも、彼女たちの時間はここからだった。
「イルミネーション行こ!」
幸菜が言い出し、みんながスマホで近くの場所を探し始める。良さそうな場所を見つけた澪は、「ここならどう?」とみんなに見せ、そこにしようと向かった。
しかし、なかなか見つからず、澪は一人焦っていた。誰一人としてそんな澪を助けようとはせず、ただついて行くだけだった。言い出した幸菜は業を煮やしたのか、遂に、澪に一言言った。
「ちょっと澪!ちゃんと調べてよ!」
軽く言った一言なのかもしれない。だが、澪はそんなことも考える余裕が無かった。誰のためにこんなに必死になっているのか。確かに着いて来てくれた彼女たちも歩き疲れたのかもしれない。しかし、澪の後で楽しく雑談していただけではないのか。そんな気持ちを押し殺し、澪は「ごめんね。もう近くだから」と笑顔を見せた。

ようやく着くと、澪を置いて、4人はスマホ片手に写真を撮り始めた。
「皐月、写真撮ろ!」
幸菜は澪にお礼を言うことはなく、そう皆で写真を撮り始めた。各各とツーショットを撮っていく中、とうとう澪の番かと思われたが、「疲れた〜」と言ってしゃがみ込むだけだった。
澪はその日、ただ皆の前でスマホ片手に道案内していただけだった。
1度、みんなから視線を離してみてみよう。澪はそう意識し始めた。すると、 徐々に見えてきてしまった。
何か澪が話せば、場は自然と静かになる。でも、澪が話さなければ、場は盛り上がる。その内容はいつも、友奈が中心だった。
「ちょっと幸菜聞いて〜?昨日さ、やばい人にLINE交換させられちゃった〜」
「は?!まじ?アンタ可愛いから気を付けてよ!」
このことを言われるのが好きな友奈は満足そうに笑った。そして、澪に視線を勝ち誇ったかのように向ける。 そのことに感づいたのだ。いつもならここで、「ブロックして見なければ終わるじゃん?」
と言うと、幸菜が反論する。
「友奈は優しいからそういうの出来るわけないじゃん!」
バカバカしいと澪は視線を逸らすと、どんまいと口パクで、七緒(なお)が声をかけてくれた。
七緒は唯一の澪の友人であった。
ある時、澪は七緒と二人っきりになった。そのタイミングで、彼女は相談した。
「最近さ、友奈って私にあたり強くない?」
「ん〜…た、確かに…」
「嫌われてるのかな」
「そんなことは無いよ!」
無責任にもそう言う。だが、澪は「そっか、ありがとう」というしか無かった。
「私って、グループの友達じゃないんだ」
そう気付いた。
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