愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「追い出されてもいいように、覚悟はしておかなくちゃ……」

 そう思ってぎゅっと手を握ったとき。ふと、お部屋の扉がノックされる。

 ……誰?

 そんな風に思って一瞬だけ躊躇う私だったけど、返事をしないという選択肢はなくて。

「は、はい!」

 ほんの少し上ずったような声で、扉に向かって声をかけた。

 そうすれば、扉が開いて一人の女性が姿を見せる。彼女は茶色の髪をきれいにお団子にしており、その優しそうなたれ目が特徴的。顔立ちからして、私よりも少し年上……だと思う。

 そんな彼女は、丈の長い侍女服を身にまとっていた。

「テレジアさま。おはようございます。昨夜は、よく眠れましたでしょうか?」

 人懐っこい笑みを浮かべた侍女が、そう問いかけてくる。なので、私はこくんと首を縦に振った。

「え、えぇ、とてもよく……眠れた、わ」

 それは間違いない。

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