【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
 それからしばらく時間が経って。

 誰かが、私の側に立つのがわかった。その誰かは私の身体に上着をかけてくれて、「風邪引くぞ」と言葉を発した。

「……ラインヴァルトさま」

 その人物のお名前を口にすれば、彼は「あぁ」と端的に返事をくれた。

 そして、彼の手が私の肩に触れようとする。……咄嗟に、振り払ってしまった。

「テレジア?」

 視界に入った彼の驚くような顔が、私の心臓をぎゅって締め付ける。

 でも、彼に優しくされたくなかった。だって、優しくされたらもっともっと苦しくなってしまうだろうから。

「……ごめんなさい」

 小さくそう言うのが、精一杯だった。

 震える声で謝罪をする。ラインヴァルトさまの手が、宙を彷徨っているのがわかった。

 多分、私に触れていいものか思案されているのだろう。

「テレジア。なにか、嫌なことでもあったか?」

 彼がそう問いかけてくる。……嫌なことが、あったかどうか。

 それは、私にもよくわからない。ラインヴァルトさまがほかの女性と親しくされていて、それがほかでもないコルネリアさまで。挙句、王妃殿下もコルネリアさまのことを認められていて……。

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