【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
「……あのね、ミーナ。私、もう他者のお言葉に振り回されるのはやめるわ」

 今回は、王妃殿下のお言葉に感情を揺さぶられてしまった。その結果、ラインヴァルトさまとすれ違ってしまった。

 ……今度からは、しっかりと彼にお話を聞こう。彼は、私のことを蔑ろにしない。それが、よくわかった。

「さようでございますか。それがようございますよ」

 ミーナが笑って、空になったティーカップに紅茶を注いでくれる。

(えぇ、そう。流されてばかりでは、ダメなのよね)

 そう思ったとき、不意に胸の中になにかがつっかえたような気がした。

(……王妃殿下のあのお話は)

 なんだろうか。今思い出せば、あれはまるで――私に不安を植え付けることが、目的のようにも聞こえる。

 コルネリアさまとラインヴァルトさまの仲をにおわせて、私にラインヴァルトさまとの結婚をあきらめさせるように……という風にも、受け取れた。

「テレジアさま?」
「……いえ、なんでもないわ」

 ゆるゆると首を横に振って、私はクッキーを口に入れる。

(どうせ、ただの勘違いよ。……行き違いが、あっただけだわ)

 自分自身にそう言い聞かせて、私は咀嚼したクッキーを呑み込んだ。

 喉が渇いていくような感覚は、クッキーの所為だったのか。はたまた――これから起こることへの、不安の表れだったのか。

 それは、現状定かではなかった。
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