ねぇ君は恋をしたことがある?

勇者と魔法使い



キーンコーンカーンコーンーーーーーー。

「はい、ここまで。後ろから回収してください。」

小テストを終えて休み時間になる。

高校に入学してから1週間が過ぎた。

「渚、テストどうだった?」

この子は、鈴音。高校ではじめての友達である。

中学が同じだった人は少なく、私と椿くんを含めて3人である。

「まぁまぁできたよ。」

「そっかぁぁ。ていうかちょっと話があるんだけど!!」

そう、いって興奮気味な鈴音が私の腕を引っ張ってトイレへと向かった。

「ねぇ!渚の隣の椿くん!同中なんでしょ?!」

「そうだけど…」

「か、彼女とかいるのかな?!」

「さては、あの美貌にやられたな?」

「だってさぁああんなイケメンそうそういないよ?!いやーうちの中学でもいたかどうか…いや、」

「いや?」

「んーまぁまぁ」

「え。なにまぁまぁって」

「いやー、だって、」

キーンコーンカーンコーンーーーー。

「やばいやばい予鈴だよ急ご急ご‼」

「逃げたな鈴音」

「えー?なんのことー??」

ーーーーーーーーーーーー。

あーわかんないなぁ。

まだ1週間しか経っていないというのに、鈴音は既に椿くんを気になり始めている。

んーやはり、あの美貌には目が行くのか?

それは分かるが、そこから恋愛感情が抱くなら、イケメンならば好きになってしまうものなのか…?

「あの、」

いや、いままで自分で考えて分からなかったんだ。

「あの、」

鈴音本人に後で聞いてみるか…

「えっと聞こえてる?」

「え?」

「ノート忘れちゃって、1枚くれない?」

「あーいいよわかった。」

椿くんに話しかけられてたなんてまったく気が付かなかった。

「はい。どうぞ。」

「ありがと。」

んーこの無駄な口数がないところがいいのか?

椿くんは無口というわけではなく、中学の頃も隣の人とは軽く話はする。

まぁ、話すと言っても授業のペアのときだったり、こうやって困った時だけだけど。

だから女子のみんなは、椿くんの隣席になったときにとてつもなく喜ぶ。

「それでは、今回の授業は、作者の伝えたいことについて隣の人と話し合ってもらいます。話し合ったものを、ノートにまとめ、授業の最後に提出してください。」

「えーと、椿くんはなんだと思う?」

「まだ、考えるから橘から話して」

「私はこの勇者が命を張って大切な人を助けたように、私たち読者も大切な人を…いや、勇者の旅人の魔法使いのように、自分の命を守って命の大切さを伝えたかったんじゃないかな。」

正直勇者の気持ちがあまり理解できない。

大切な人をあなたも守ってくださいだなんて、家族ではない人を助ける気持ちが理解できない。テストでは大切な人を守ることの大切さと書くけれど、正直理解できないものだ。

「でも、これ勇者がメインで書かれてるし、物語的には逃げた魔法使いは悪者扱いされてるし、勇者の気持ちになれってことだと思った。」

「そっか、まぁ考え方はそれぞれだしね。でも、なんで勇者は村の女の子を救ったのかな」

「それはだって、好きだったからじゃない?」

「じゃあさ、橘くんは恋をしたことがあるの?」

「それは…」
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