α様は毒甘な恋がしたい

戒璃side


 ☆戒璃side☆


 ――もう俺のことなんて、何とも思っていないんでしょ?


 資料庫から出ようとして、俺の足が固まる。


 ――俺に気持ちがないならなぜ、そんな可愛いことをするかな?



 開きかけのドアの後ろ。

 見つからないように、俺は瞳だけを晒した。

 生徒会室の4人掛けソファに座っているのは、腰まで伸びる黒髪がまばゆく光る転入生。

 彼女は俺のブレザーに顔をうずめては、「う~う~~」と顔を小刻みに震わせている。


 オメガ特有の求愛行動

 【巣作り】

 その初期動作のように見えるんだけど……


 顔をこすりつけたくなるほど、ブレザーにしみこんだ俺のフェロモンが恋しかった?


 そんな求愛行動っぽいことをされたら、勘違いしちゃうけどいいの?

 都合よく思い込んじゃうけどいいの?

 美心は俺のことが、今でも大好きだって。


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