腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー
1.憧れた街で遠のいた希望



 いつかは大好きな人と結婚をして、大切な家庭を築いて、この憧れの街ベリが丘という、美しい街で素敵な景色を眺めながら生活していきたい、


 幼い頃からずっとそう、思っていた。


 一年付き合った彼氏と婚約して、会社も近いからと、ベリが丘に住むことを許してくれて、婚約指輪ももらって、お互いの両親に挨拶も済ませた。

 一年先にはなるけれど、身内だけで結婚式を挙げれるように海外の式場も予約して、新婚旅行の計画も立てていた。


 ――理想の生活がもう少しで叶うはずだった。


 私、有栖川和歌(ありすがわわか)は体調が優れず仕事を早退した。


 ベリが丘の街の櫻坂に位置するジュエリーショップで仕事をしてもうすぐ半年となる。半年間の研修期間を終えたら、正式に正社員として雇用してもらえる為、早退している場合ではないのだが、今日はどうしても無理だった。


 ふらふらの足で、ベリが丘のサウスエリアにあるマンションまで帰ってきた。ベリが丘の街のノースエリアという区域は古くから富裕層が多く住んでいる。近年はサウスエリアにも一般住宅が増えだし賑わっている。


 けれど、サウスエリアは誰でも住めるというわけではない。ベリが丘の街ということもあって、審査がとても厳しい。その審査をくぐり抜けて、サウスエリアのマンションを契約することができた。


 婚約者である尚人(なおと)と一緒に暮らしているマンションまでたどり着いた。


 玄関に見覚えがない女性物の靴が揃えられている。お客さんが来ているのかもしれない。


 ビックリさせないように忍び足で家の中へ入ると、

「はあ、よかった。やっぱ俺達体の相性最高だよ」

 寝室から尚人の余韻に浸っているような、色っぽい声が聞こえてきた。


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