つれない男女のウラの顔
「なるほどねー。知らない間に色んなことがあったのね」
「報告が遅くなってごめんなさい」
「ほんとよ。普通にショックなんだけど。でも京香から恋バナが聞ける日が来るなんて感慨深いわ」
京香がついに恋しちゃったかー。と、マイコはビールを煽る。
「マイコ、私どうすればいいかな。両親のためにも婚活したい気持ちはあるけど、その人のことしか考えられなくて。だから匠海くんとのデートも気が乗らないし」
「でもその人は一生独身宣言をしてる。ほんと厄介な話ね」
初恋の相手として選ぶにはハイレベルだったと思う。
報われない恋だと分かっている。だけど気持ちは止められない。むしろ強くなる一方だから困る。
「推し活しかしていない私にちゃんとしたアドバイスが出来るかは分からないけど…まぁでも落とせない相手だからといって、その幼なじみと付き合わなきゃいけないって訳でもないし。そんなに思い詰めなくてもいいと思う」
ジョッキを置いたマイコが、真剣な表情で真っ直ぐに私を見つめてくるから思わず背筋を伸ばした。
「京香が親思いなのは知ってるし、両親を早く安心させてあげたい気持ちも分かる。お父さんの体のことを考えて焦る気持ちも理解出来るわ」
「……」
「男が苦手な京香にとっても、新たに出会いを求めるより慣れてる幼なじみ君の方が都合がいい。しかも京香の体質を理解しているし、色々話が早いものね。でもその分、幼なじみ君とのデートはプレッシャーが凄いんでしょ。ご両親のお気に入りだから特に」
「……確かに、そうかもしれない」
匠海くんとのデートを断れないのは、両親のためというのが大きいと思う。今まで浮いた話がひとつもなくて、散々心配かけてきたから。特に母は匠海くんとのデートを楽しみにしているから。
だから今更裏切れない。少しでも安心させたい。それに、新たに出会いを求めるのも怖い。
成瀬さんを想っていても未来はない。でも父の夢を叶えてあげたい。
心のどこかで、匠海くんとのデートを失敗させてはいけないというプレッシャーに襲われている。
でも本心は、成瀬さんと一緒にいたい。
「でもね京香、ひとつ勘違いしてはいけないことがあるわ」
「…勘違い?」
「ご両親の夢は京香の花嫁姿を見るのことかもしれないけど、それはドレス姿が見たいって意味じゃないの」
「…どういうこと?」
「京香の幸せな姿が見たいんだよ」