つれない男女のウラの顔
「まぁだからといって、その隣人を思い続けて京香が幸せになれるわけでもないし、その幼なじみ君を選んでも幸せになれるかもしれない。他の出会いを求めるのも悪いことではなかもしれないけど」
「……」
「でも京香自身が、今の気持ちを大事にしたいって言うなら、それをそのままご両親に伝えたらいいじゃない。すぐに花嫁姿を見せるのは無理かもしれないけど、彼といる時間が幸せなのって言えば分かってくれるかもしれないでしょ。大事なのは、京香が幸せそうにしているところを見せることよ」
マイコって人生を何周した人なんだろう。初めて出会った時からそうだったけど、マイコの言葉は私の中にスッと入ってくる。まるで親のような安心感と包容力がある。
未熟な私をいつも優しく引っ張りあげてくれる。私にとってかけがえのない存在だ。
「とりあえず、その隣人にもっとアピールしなきゃね。まだ出会って間もないわけだし、それこそ焦らずいかなきゃ。京香が一途に思い続けていたら、彼の独身を貫くっていう意思も揺らぐかもしれないし」
「そうだといいけど…」
恋愛には興味がないと言っていたし、誰かと一緒に住むのも考えられないとハッキリ言っていた。
マイコならまだしも、私みたいな経験値0の人間に、彼を落とせるテクニックがあるだろうか。
「てかさ、その人とデートの練習したんでしょ?どうだった?どんなことしたの?」
「えっと…彼の車で出掛けたんだけど、海鮮丼食べたり、足湯に行ったり、海の見えるカフェでお茶して、晩御飯を食べたあとは海沿いにある夜景の見える公園に…」
「“練習”にしてはめっちゃくちゃしっかりデートしてるわね。これでもかってくらい詰め込んでるじゃない。ただ遊んだだけ?手くらい繋げた?まぁでも最初だし、さすがに何も…」
「繋いだよ」
「……なんですって?」
「名前で呼び合ったし、あとは…き…キスも…」
「京香さん、姿勢を正してよく聞きなさい」
マイコの視線が鋭くなり、声がワントーン低くなった。なにかマズイことをしてしまっただろうか。
「ねえ、それって脈アリなんじゃないの」
「え?そんなはずは…」
「どう考えても、女に興味のない男の行動だとは思えないんだけど」