65リットルよりも、笑って。




実はこの手を掴んだときあたりから違うな、これじゃないなって薄々気づいてた……とは、言えそうにないまま今という事実。


私を触ってきた卑猥なものは、もっと肉厚で年老いているような手だった。

こんなにも綺麗な手じゃなかったところに恨みたくなる。



「もし冤罪として俺が訴えて勝った場合、かなりの賠償金だと思うが大丈夫か」


「え……」


「そこまで言うなら、俺だっていう紛れもない証拠あんのか。俺は確実に俺じゃないって証言くらいは持ってる」


「ど、どういうこと…」


「俺がそれを見てる側だった。本当は、あの停車駅に止まったときそいつを注意しようとしてたんだよ。ちなみにそいつが持ってたバッグから名刺が飛び出してて、ある程度の会社名は分かってる。摘発することも可能」


「…………」


「ってのに、なぜか俺がおまえに捕まって今」


「…………」



だんだん顔色が冷えていく私に、ため息が落とされる。

時刻案内板を見つめた男は、立ったまま何度か貧乏揺すりのようなことをして気持ちを伝えてきた。


つぎの急行電車が来るまで10分はある。



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