いつまでも、側に。

Ⅵ. デート


「先輩、今週土曜って空いてますか?」


「なんで?」


「えっと、その、デートしたくないですか。」


「ぷっ、何それ」


先輩に笑われた。


「……いいよ。行こ?」


「水族館、とか」


「水族館かぁ……懐かしいね。」


「じゃあ、待ち合わせを決め……」


「の前に、」


「連絡先、交換。ね?」



僕の2つしかなかった連絡先が3つに増えた。



デート当日。


「先輩、今どこですか。」


「和泉駅の中」


「何口ですか。」


「東口」


「迎えに行きます。」

「ありがとう」



「着いたね。」


「はい。」


「どのエリア、行きたいですか。」


「どこでも。」


「じゃあ、順に回りましょう。」



「ねぇ、ちーくん見て。ペンギン。」


「ケープペンギンだって。可愛い。」


「……可愛いです。」


主語は言わなかった。


それから、熱帯魚だの、深海魚だの、イルカショーだのと、先輩に引っ張られながら見て回った。

家族じゃない誰かと出かけるなんて、久しぶりだった。


「楽しかった!」


「良かったです。」


「今度は、私から誘うね。」


「……何をですか。」


言い方が危なかった。


「次は、私の家に来ること。」


「わかりました。」



やっぱり、ノーとは言えなくなっていた。

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