トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜
第四章 映画の仕事
「ワンツー、スリーエンフォー。キックエンターン…、あ、タイミングちょっと違う」

年が明け、また忙しい日々が戻ってきた。
この日、サザンクロスの4人は朝からレッスンルームで新曲の振り写しをしていた。

新曲は、富田が「カッコよさ全開」と表現していた通り、アップテンポで大人っぽく、そしてとにかくカッコイイ。

普段とは違うカメラワークを意識し、片手を床に付いたり、4人でタイミングをずらしてポーズを決めたり、交差したりすれ違う時に小道具のボールをパスしたり。

目まぐるしく動きが変わり、やっている本人達も何がどうなっているのか分からないほど複雑だった。

「もう一回、ゆっくりカウントしながらやるよ。セーブンエイト…ワン!ツー、スリーエン、あ!そのエンドのところの足の角度がずれてる」

今一番人気があるコレオグラファーのリュウが、またしてもストップをかけて細かな指示を出す。

(ひえー、まだ曲の半分もいってないのに2時間経ってる)

新曲の衣装をデザインする為、陽子と二人でレッスンを見学させてもらっていた明日香は思わず首をすくめた。

「うーん…、色々厳しいわね」

隣の陽子が小さく呟き、明日香も頷く。
ここまで動きが激しくカメラワークも複雑だと、衣装のデザインもすぐには思い浮かばない。

取り敢えず思いついたデザインをサラサラとスケッチブックに描いていくが、どれもピンとこなかった。

「それにさ、あの小道具のボール。あれはどういう意味なのかしら?」
「そうですよね。しかも、今はこれでやってみてってリュウさんがおっしゃってたから、本当は何か別の物かもしれないですよね」
「んー、やっぱり情報のリリースを待つしかないか」
「そうですね」

この新曲は、何のタイアップなのか?
メンバーの出演番組に使われるのか?

その情報が分からないままでは、イメージのしようがない。

「いや、でもなあ。これはいつもよりデザインにも製作にも時間がかかりそうだし、待ってられないわ。明日香、あとで富田さんを問い詰めに行きましょ」
「と、問い詰め…。そうですね、うかがってみましょう」

結局振り写しは最後までたどり着けずに時間切れ。
続きは後日となり、その日のレッスンは終わった。
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