トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜
第八章 衣装合わせ
そしていよいよ、映画の俳優陣の顔合わせの日がやってきた。

この日は互いの役柄の紹介と簡単な読み合わせ、そのあと衣装合わせも予定されている。

明日香と陽子はたくさんの衣装を車で運び込むと、時間まで別室で準備をして待つ。

やがて読み合わせが終わった瞬と相手役の沙奈、子役の健悟の3人が明日香達の待つ部屋へとやって来た。

「お疲れ様です。今回衣装を担当させて頂く、オフィス クリスタルの小池と申します。どうぞよろしくお願い致します」

深々と頭を下げてから、早速衣装を手渡して試着してもらう。

瞬は慣れたように一人で控え室へと向かい、陽子は沙奈のフォローに行く。

残された明日香は、子役の健悟の前にしゃがみこんだ。

「初めまして、健悟くん。私の名前は明日香です。よろしくね」

すると健悟は、恥ずかしそうに母親の後ろに隠れる。

「こら、健悟。ご挨拶は?」

そう言われても、じっと母親の足にしがみついたままだ。

「大丈夫だよ。いきなり話しかけられたら、びっくりするよね。じゃあ、ママと一緒にこのお洋服を着てみてくれるかな?」

黙ったままの健悟に代わり、母親がすみませんと服を受け取って控え室に着替えに行った。

「んー、やっぱりキビシイな、あの子」

ふいに後ろから声がして振り向くと、助監督が困ったように頭を掻いている。

「なにがですか?」

思わず明日香が尋ねると、助監督は渋い表情のまま続ける。

「普通、オーディションで選ばれるような子役は、大人びてて仕事もしやすいんだ。おはようございます、よろしくお願いします!って自分から挨拶回りしてさ。でも藤堂監督は、そういう『子どもらしくない子ども』は敢えて選ばないんだ。その気持ちも分からなくはないけど、やっぱり劇団に所属して、しっかりレッスンや礼儀作法を教わってる子役の方が仕事しやすいんだよ。演技も上手いしね」
「そうなんですか」

言われている意味は分かるが、納得は出来ない。

(だからって、どうしてさっきの健悟くんがキビシイなんて言われるんだろう)

そう思っていると、母親に手を引かれて健悟が戻ってきた。
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