トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜
第十三章 全明日香が泣いた
「うん、良さそうね」

映画の撮影が終了すると、すぐさまサザンクロスの新曲「Truth」のミュージックビデオの撮影が始まった。

ダークな空間の中、衣装に身を包んた4人がキレのあるダンスとしびれるような歌声を披露する。

ほのかに光る球体を使いながら踊り、目まぐるしくメンバー同士でパスを回した後、ラストに他の3人が真上に高く投げてからターンして離れ、残された瞬がキャッチして曲は終わった。

モニターで衣装の映り具合を確認していた陽子が明日香に話しかける。

「照明とのバランスもいいし、動きやすそう。曲のイメージとも合ってるわよね…って、明日香?!なんで号泣してるのよ?」
「だって、ううっ。涙なくしてこの曲は聴けなくて…ひっく」
「ええ?!どうしたのよ、まったく」

途中で映画の現場を離れた陽子は、最後まで撮影を見届けていない。

「陽子さんだって、ひっく、あれを観たら、ううっ。絶対に、ぐすん」
「あーもう。泣くかしゃべるか、どっちかにしなさい」

陽子はポケットからハンカチを取り出し、明日香の顔をゴシゴシと拭く。

「明日香、またノーメイクなの?」
「はい。だって、ううっ、衣装にファンデーションついたら、うぐっ、大変だから」
「見上げたプロ根性だけど、好きな人の前ではもう少し可愛くしてもいいんじゃない?」
「…はい?」

すると、休憩に入ったサザンクロスの4人がセットから降りて来た。

「あっ!また陽子さんが明日香ちゃん泣かせてる!」
「違うわ!それに、またって何よ?」

直哉の言葉に陽子は即座に反応する。

「あはは!イメージ図ってやつ?」
「はあ?何なのよ、それ?!」
「ほら、また怒ってる」
「直哉!!」

いつものやり取りに皆も笑い出す。
瞬も穏やかな笑みを浮かべていた。
過酷な撮影期間が終わり、ようやく肩の荷が下りたようだった。

(良かった。瞬くん、やっと安心出来たね)

明日香もホッとして、久しぶりにメンバーと楽しそうに笑い合う瞬を見守っていた。
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