トップアイドルの恋 Season2〜想いを遂げるその日まで〜
第十四章 完成披露試写会
いよいよドームコンサートが始まった。

ここからは待ったなし、まずはコットンキャンディのコンサートにかかり切りになる。
リハーサル、本番、次の日もその繰り返し。
そして別の会場へ移動してまたリハーサル、本番。

衣装の準備やクリーニング、手入れに補修。
明日香は飛ぶように過ぎていく時間の中で、集中して仕事をこなしていく。

チーフデザイナーとなって初めてのコンサート。
他のスタッフからも、チーフ!と呼び止められて質問を受ける。

責任感と失敗出来ない緊張感に、明日香は気を張り詰めていた。

無事に全日程が終了し、打ち上げに参加する暇もなく今度はサザンクロスのツアーに合流する。

「1、2、3、ん?一枚足りない」

コットンキャンディは色違いや形も異なる衣装が多いが、サザンクロスの衣装はほとんどが同じものだ。
しかもシャツやジャケット、スラックスに小物と、1曲ごとに使う物が多く、明日香は何度も慎重に確認しながら準備していた。

迎えた初日。
まずはこの一日を無事に乗り越えなくてはならない。

メンバー4人に大勢のスタッフ、皆で一丸となって気合いを入れた。

「次の曲まであと15秒です!」

タイムキーパーの声を聞きながら、ステージ袖の暗がりで4人は急いで衣装チェンジをする。
息を切らしながら素早く着替えるメンバー達を、明日香は1秒も無駄にせず、あうんの呼吸で手伝っていた。

冒頭からたたみかけるように数曲を披露し、ようやく映像の上映に移る。

メンバーはぐったりと椅子に座り、束の間身体を休めた。

「はあ、キツイ!やっぱり三十路に入ると一気に体力衰えるな。歳には勝てん」

直哉がそう言うと、ようこそ30代の世界へ!と陽子が笑う。

「30なんて、まだまだ若い!ほら、瞬を見なさいよ。涼しい顔して余裕じゃない。歳のせいにしないの」
「うわー、ホントだ。瞬、お前体力お化けか?」
「瞬はちゃんと鍛えてるの!ねえ、瞬」

陽子に聞かれて、瞬はわずかに笑う。

「ほら、ひけらかさないところも直哉と違うんだから。男はね、黙って態度で示すものよ」
「ああ!亭主関白ってやつ?」
「優斗、それはまた意味が別」

直哉と陽子の会話に加わる優斗と充希を、瞬は微笑みながら見ている。
そんな瞬に、明日香は胸がキュンとした。

(瞬くん、最近グッと大人っぽくなったなあ。知らず知らずのうちに見とれちゃう。って、大変!次の衣装…)

己に喝をいれて、明日香は仕事に集中した。

夏はコンサートで一気に駆け抜け、暑さがようやく和らいできた頃。
映画「真実の光」のPR活動が始まった。
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