恋の罠は酷く切ないけど甘い
私、月城志波(つきしろしなみ)は奨学金で大学の理工学部環境システム工学科を卒業後、この事務所に就職した。
今年27歳になる。ダークブラウンの背中の半分ぐらいの髪は、いつも仕事がしやすいようにバレッタでまとめていて、現場にも行くことも多いため、もっぱらストレッチの効く、モノトーンのきれい目のパンツに、カットソー、そして打ち合わせ用のジャケットを羽織る。だいたいそんな感じだ。

ぱっちりとした二重のせいか、ノーメイクだと幼くみえることから、おちついた色合いのメイクを心掛けている。身長も160㎝とどこにでもいるような人間だ。

しかし、仲間にも恵まれ、資格も順調に取り、キャリアも重ねられていると思う。
それもすべて、大学の先輩でもある玲衣先輩のお陰だ。彼が大学院を卒業後、起業した時に『うちで働けば勉強もできるし』そう誘ってくれたことで、アルバイトとして雇ってくれ、苦しい学生時代を乗り越えられたと思う。

仕事に関しては自分が仕切るよりは、本来、誰かの下で出された指示をこなす方が向いていると思う。
もちろん、一軒家などの設計などひとりでこなす仕事もするが。
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