888字でゆるいミステリー

第一話 「私のエクレアがきえた」






ああっ!

私のエクレアが食べられてる!!

エクレアは私のって言っておいたのに……。

ひどすぎる!

犯人をとっちめてやる!

容疑者は3人。

私よりも早く帰宅していた父、母、弟。



「お母さん、私のエクレア食べた?」

「食べてないわよ。私はまだ箱も開けてないのよ。白いクリームのシュークリームがあったら、取っておいて頂戴」



んん……、この反応だと違うみたい……。



「健、私のエクレア食べた?」

「チョコのやつ食べただけだよ。姉貴は抹茶のだろ?」


ということは、健ではなさそう……。



「お父さん、私のエクレア食べた?」

「抹茶のシュークリームを食べたぞ」



えっ……? 

じゃあ、誰も私の抹茶のエクレアを食べてない……?

ええ?

そんなわけない。

昨日はあった抹茶のエクレアが消えてるのは事実だもん。

お母さんはまだ箱を開けて中を見ていない。

だとすると、健かお父さんのどっちかが嘘をついてる!



「健! 怒んないから、ホントのこと言って!」

「もう怒ってんじゃん」

「私のエクレア食べたんでしょ?」

「ちげーし。エクレアごときでなんでそんなにムキになってんの? 

他のでいいじゃん」

「口がもう抹茶味の口になってんの!」



うーん、でもこの反応だと、健じゃない感じ……。



「お父さん、抹茶のエクレア、ホントに食べてない?」

「だから抹茶のシュークリームは食べたぞ」



……うーん……。

健もお父さんも嘘ついてないみたい。

でも、だとしたら、なんで私の抹茶のエクレアが消えてるの?

泥棒が入って、たまたま抹茶のエクレアだけ食べてったの?

んなわけないでしょ!

謎が解けないまま夕飯になった。

食後、デザートを食べようということになり、シュークリームとエクレアの入っている箱を開けた。



「ほら葵、どれにする?」



うー、どれと言われても、抹茶の気分だったのにな〜。

その時、お父さんが箱を覗いていった。



「俺はそのチョコの長いシュークリーム」

「あ、これね」



お母さんがチョコのエクレアを取って、お父さんに渡した。

……ん?

ちょっと待って?



「お父さん、今なんつった?」

「チョコか? チョコならそこに丸いのもあるぞ」



……おやじっ!!

あんたかっ……!!

長いシュークリームをエクレアっていうんだよ!


                                  


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