パティシエ総長さんとコミュ障女子


「早く学校着かないかな〜」


そう呟いて遠い目をするゆっこちゃんに激しく同意だ。


「ほんと。早くクーラーに当たりたい」


そう言って私は額に浮かんでくる汗を拭った。

校門につき、校舎まで歩き、クーラーの風に当たった時。

私たちがどれだけ歓喜したかは、言わずもがな、であろう。

ゆっこちゃんなんて、クーラーを神として崇めていた。

教室の大半がそんな様子で、クーラーはクラス全員から神として崇められ、昼休みが来る頃にはお菓子やジュースなんかが供えられていた。

もしもクーラーに命があったなら、大困惑だろう。


「あ、そういえば凛ちゃん」

「何?」


昼休み、蓮ちゃんが弁当を食べながら話しかけてきた。


「あのね、双竜会がまた新しくグループ潰したらしいよ。これでほとんど県全域が双竜会の統治下だよ。」


うわぁ、双竜会の話かぁ。

ちょっと苦い思い出があるからあんまり聞きたくない話だ。


「す、すごいねぇ。」


そう言う私に蓮ちゃんは畳み掛ける。


「凛ちゃんは総長さんと知り合いでしょ?あの後は会ったりしているの?」


会ったりしているも何も……
そもそも彼はまだ私を覚えているだろうか。


「うーん、全然。ちょっと気まずいしね…あはは。」


私は眉を下げて誤魔化し笑いをするしかなかった。
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