元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした

8、解毒されました

「はぁ……毒がまわりすぎて、簡単に酔えません」

 私は飲み干したワイングラスを手に、テーブルに突っ伏した。
 月見里さんは空になった私のグラスにおかわりを注いでくれる。

「時間がかかるだろうから、ゆっくりしていけばいいよ」

 結局、彼のおうちでお風呂を使わせてもらい、そのままリビングで酒を飲んでいる。
 私は床に敷かれたふしゃふしゃの絨毯の上に座ってテーブルに肘をつき、大変行儀の悪い格好でグラスを傾けている。
 対する彼はきちんとソファに座って料理を取り分けてくれる。

 皿にはモッツァレラと生ハムのサラダにオリーブとバゲット添え。
 唐辛子がぴりっと効いたアラビアータにスパークリングワインがめっちゃ合う。

「簡単なものしかなくてごめんね。出前でも取る?」
「十分です。あんまりお腹すいていないので。ありがとうございます」

 とはいえ、しっかりお腹に入れてしまえるのは彼の料理の腕前がいいのと、家事スキルを見せつけられて感動しているせいかもしれない。

 ほんのり火照った顔で彼の顔をじっと見つめる。

 ああ、本当に顔のいい男だこと。
 もう見ているだけで癒されるから十分だよ。

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