マフィアのお兄ちゃん、探してます

初仕事!

アールアールに加入して1週間。
アールアールにはだいぶ慣れてきて、仲良しのお友達もできた。
なんと、海くんと悠里くん、柊馬くんを呼び捨てすることに成功!
今度から海、悠里、柊馬って呼ばなきゃ。
そんなことを考えながら、湊と一緒にアジトに入る。
すると、真生さん(本物!)が慌てた様子でこちらに走ってきた。
「湊様!白露様!お仕事が入りました!」
え!?お仕事……!?
俺の初仕事……!?
湊はいよいよか、って笑って俺の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
「場所は?」
「先月あたりに潰れたマフィアグループ、『マルク』のビルです。どうやら、マルクについてのデータがまだビルに残っているらしく……データのコピーをお願いしたいと」
マルクは雑魚が多すぎて潰れたマフィアグループ。
確か、総長だけが強くて、他は話にならないようなレベルだったはず。
それを真生さんに言うと、驚いたように目を見開く。
「よくご存じですね。マルクなんて相当マフィアに詳しくないと出てこない名前ですが」
「お兄ちゃんたちに教えて貰ったんです。将来俺がマフィアに入った時に役立つように、って。大体のマフィアのことならわかります」
「それは頼もしい」
湊が笑ってワイシャツのボタンを1つ外してネクタイをしめる。
俺はセーターの位置を直して、ネクタイを付け直す。
「お2人とも、これをどうぞ」
真生さんがシュッとスプレーを吹く。
ふわんと甘い香り。
何これ……?
「匂い消しです。アールアールで統一している香りなので、誰がアールアールなのかとすぐにわかります」
確かに……このキツめの香りならわかりやすそう。
「すいません、もう1回嗅がせて貰えませんか?」
「どうぞ」
真生さんからスプレーを受け取り、空中に向かってシュッとひと吹き。
甘い香りを鼻いっぱいに吸い込み、匂いを記憶する。
……よし、覚えた。
「はく?とっとと行くぞ〜」
「は〜い」
そっとバッグの中の手錠を確認。
「ウィッグ、被って行かれますか?」
真生さんの手には、青髪のウィッグ。
「あはははは!いんじゃね、そーゆーのもwww」
湊が腹を抱えて爆笑している間に、ウィッグをズレないように固定する。
さらにキャップを被って顔を隠す。
キャップにもアールアールのロゴ入り。
髪を手ぐしで粗めにとかして、バッグを腰に固定する。
拳銃ホルダーに銃が入っているのを確認。
ふわりと髪をかきあげる。
「よーし、行くか!」
時刻は夜7時。
腕に付けた時計をストップウオッチモードに設定して、スタートさせる。
気合いを入れて、アジトを飛び出した。






アジトから走り続けて数十分。
「ここかぁ……!」
思ったより小綺麗なビル。
パスワードを使い、裏口からビルに侵入。
あらかじめ渡されていたカードキーをタッチして、ビルの管理室へ。
鍵で管理室のパソコンを使い、人影センサーをオフに。
これで、警備会社に連絡がいかないはず。
「はく、大丈夫か?」
「うん、へーきだよ」
まずは1階から調べていこう。
このビルは三階建てで、思っていたよりもはるかに小さい。
マップを見る限り、1階には社員食堂と管理室。2階には社員の仕事場。
そして3階には……お目当ての総長室。
データはきっと総長室の保管庫にあると思うんだけど、念の為に全て調べておく。
うっ……このウィッグ、暑い……。
頭を冷やさないと働かないので、あまりいいことではない。
まぁしょうがないか。
キャップを深く被り直し、慎重に管理室を漁る。
手袋をして指紋が残らないように。
しばらく探していると、「なんかある!」と湊が叫んだ。
素早く視線を走らせると、そこにあったのはどんと構えている金庫。
パスワードは……知らないか。
俺は小麦粉と耳かき棒をパクってくると、小麦粉を耳かき棒のふわふわの部分につけて、パネルをなぞる。
「何してんだ?はく」
不思議そうに尋ねてくる湊。
ふっと息を吹きかけて、小麦粉を飛ばす。
すると、指紋が浮き出てきて、打った文字がわかるようになって。
「すごっ!」
湊が数字を打つと、ガチャリと音がして扉が開く。
中には……エメラルド色に光り輝く宝石。
「うへぇ……綺麗だな……」
そう言って湊は慎重に宝石を手に取り、布でくるんでポケットにしまう。
社員食堂を探していたとき。
キッチンで余っていたスティックシュガー。不自然にコップに刺さっていて気になったから、手にとってそっと揺らしてみる。
サラサラ、と音が響く。
……なんか変。
咄嗟に袋を破り、中身を取り出す。
「ちょっ、何やって……!」
自分の持っていた小さな袋に中身を入れて、そこに薬品を入れる。
中身は段々と青に染まっていく。
「……っ!?それまさか……」
俺の読み通り。
スティックシュガーの中身はコカイン……麻薬だ。
「ちょぉーっと厄介かもなぁ〜……」
湊がシュガーを回収しながらそう呟く。
それにしても……麻薬を扱っているマフィアグループなんて。
只者ではなさそう。
そう思い、しっかりと袋に入れて、そっとバッグにしまった。
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