バーン王国の田舎者〜危険な王都の片隅で、一人、新品種のジャガイモ(父作)を育てながら、田舎仲間と都人(みやこびと)たちを相手に、時に忙しく、時にまったりと、スローライフを送ります!?
四個とひとつ
「少し時間が押してるけど、まっいいか。作っちゃおう」
急ぎ足で自宅に戻ったミリアは、早速ジャム作りに取り掛かる。
実は、野生のイチゴ摘みの時に遭遇した巨大な生き物――大熊に襲われた時、イチゴの半分近くを地面にぶちまけてしまっていたミリアは、籠がいっぱいになるまで銃士のアレンに護衛を頼み込んだのであった。
そんな経緯もあり、ミリアは四の瓶に更に一つ瓶を加える。
「アレンさんにもお礼、しないとだしね」
そう呟くと、ミリアは白い小鍋をひとつ用意する。
その中に、洗って水切りをし、ヘタを取って四等分したイチゴを入れた。
それから砂糖を普通より少し少なめに入れると。
ミリアは鍋をそのままにして調理場を離れる。
「お砂糖がイチゴに染み込むまで、最低でも一時間は寝かせないとね。……ってことで、日記帳、日記帳……っと」
そう言って、茶色い帆布のバックの中から茶色い革表紙の日記帳を取り出すミリア。
それを、丸いテーブルの上に置くと。
ミリアは、嬉しそうにそれを開いた。
「今日はまだ続いているけど、アレンさんとのことは日記に書いておかないと。あんなこと、滅多にないものね……」
森の奥にあった、たくさんの野生のイチゴのこと。
巨大な大熊に襲われた事。
そして、銃士のアレンと出会ったこと。
ミリアは日記帳のペンホルダーから万年筆を取り出すと、日記帳にペンを走らせていく。
そうこうしているうちに、一時間が過ぎ――。
「さて、イチゴを煮始めますか」
そう言うと、ミリアは服の袖をまくり、コンロに火を入れるのであった。
※ ※ ※
美味しそうな、甘酸っぱい匂いが部屋中に広がる。
ミリアは、手のひらに収まるぐらいの小瓶にジャムをスプーンで入れていく。
そして、全部で五つのジャムの瓶が完成すると、ミリアはそれを小ぶりな帆布製の茶色いバックに入れていく。
そして、最後の五つ目を手に取り、ミリアは少し不安そうな面持ちでこう呟いた。
「アレンさん、貰ってくれるかなぁ」
銀色の髪に、青く鋭い眼差しのアレン。
歯に衣着せぬ物言いをする彼が、こんな、どこの物ともつかない怪しげなジャムなど受け取ってくれのだろうか。
「保存食だから、会えた時に手渡せばいいとして。最悪、渡せなければ自分で食べればいいし。ま、いっか……」
そう言うと、ミリアは五個目のジャムもバックの中に丁寧にしまい込んだ。
「さて、ジャムも出来たし、日も暮れて来ているし……そろそろ行かなきゃね」
そう言うと、ミリアはエプロンを徐に外して椅子の背もたれに引っ掛ける。
そして、ジャムの小瓶が入ったバックの中を改めて見つめると、期待に満ちた顔でこう呟いた。
「みんな、喜んでくれると良いなぁ……」
そう言って、にんまり微笑むと。
ミリアはお気に入りのリュックとジャムの入ったバッグ片手に、鼻歌交じりに家を後にするのだった。
急ぎ足で自宅に戻ったミリアは、早速ジャム作りに取り掛かる。
実は、野生のイチゴ摘みの時に遭遇した巨大な生き物――大熊に襲われた時、イチゴの半分近くを地面にぶちまけてしまっていたミリアは、籠がいっぱいになるまで銃士のアレンに護衛を頼み込んだのであった。
そんな経緯もあり、ミリアは四の瓶に更に一つ瓶を加える。
「アレンさんにもお礼、しないとだしね」
そう呟くと、ミリアは白い小鍋をひとつ用意する。
その中に、洗って水切りをし、ヘタを取って四等分したイチゴを入れた。
それから砂糖を普通より少し少なめに入れると。
ミリアは鍋をそのままにして調理場を離れる。
「お砂糖がイチゴに染み込むまで、最低でも一時間は寝かせないとね。……ってことで、日記帳、日記帳……っと」
そう言って、茶色い帆布のバックの中から茶色い革表紙の日記帳を取り出すミリア。
それを、丸いテーブルの上に置くと。
ミリアは、嬉しそうにそれを開いた。
「今日はまだ続いているけど、アレンさんとのことは日記に書いておかないと。あんなこと、滅多にないものね……」
森の奥にあった、たくさんの野生のイチゴのこと。
巨大な大熊に襲われた事。
そして、銃士のアレンと出会ったこと。
ミリアは日記帳のペンホルダーから万年筆を取り出すと、日記帳にペンを走らせていく。
そうこうしているうちに、一時間が過ぎ――。
「さて、イチゴを煮始めますか」
そう言うと、ミリアは服の袖をまくり、コンロに火を入れるのであった。
※ ※ ※
美味しそうな、甘酸っぱい匂いが部屋中に広がる。
ミリアは、手のひらに収まるぐらいの小瓶にジャムをスプーンで入れていく。
そして、全部で五つのジャムの瓶が完成すると、ミリアはそれを小ぶりな帆布製の茶色いバックに入れていく。
そして、最後の五つ目を手に取り、ミリアは少し不安そうな面持ちでこう呟いた。
「アレンさん、貰ってくれるかなぁ」
銀色の髪に、青く鋭い眼差しのアレン。
歯に衣着せぬ物言いをする彼が、こんな、どこの物ともつかない怪しげなジャムなど受け取ってくれのだろうか。
「保存食だから、会えた時に手渡せばいいとして。最悪、渡せなければ自分で食べればいいし。ま、いっか……」
そう言うと、ミリアは五個目のジャムもバックの中に丁寧にしまい込んだ。
「さて、ジャムも出来たし、日も暮れて来ているし……そろそろ行かなきゃね」
そう言うと、ミリアはエプロンを徐に外して椅子の背もたれに引っ掛ける。
そして、ジャムの小瓶が入ったバックの中を改めて見つめると、期待に満ちた顔でこう呟いた。
「みんな、喜んでくれると良いなぁ……」
そう言って、にんまり微笑むと。
ミリアはお気に入りのリュックとジャムの入ったバッグ片手に、鼻歌交じりに家を後にするのだった。