君と二度目の恋に落ちたら
母は25歳の時に私を産み、今年で41歳を迎える。大学を卒業して就職した会社で3つ上の父と出会い、私を身籠ってから結婚し、会社を退職したらしい。その後、私を出産してからずっと専業主婦として16年間過ごしてきた。

母の地元は同じ県内だが少し離れた所にあり、私の同級生の親の数人とは連絡を取ったりすることもあるようだが、それほど親しく一緒に出掛ける友人などは近くにいない。

そんな母に私はもう少し幼い頃に「寂しくないの?」と聞いたことがあったが、母は笑いながら「そんな寂しいなんてことないよ。私にはゆりあとお父さんがいるんだから」と言っていた。その言葉に嘘はなく、母は私と父に尽くすことにとてもイキイキとしていた。

父もそんな母に感謝の気持ちを忘れることなく、母のことをとても大切にしているのでバランスが取れているのだと思う。

私だけでなく、母は父の会社での話などもとても楽しそうに聞いている。

母は私がこの家を離れることになった後、どうなるだろうかと不安に思うこともあるが、夫婦二人の生活になったとしても父と母であればきっと穏やかに過ごしていくのだろう。

母とのお茶の時間が終わり、母は夕飯の支度に取り掛かり、私は明日までの課題をさっさと済ませてしまおうと自分の部屋に行った。

課題の終わりが見えてきた頃、階下から玄関が開く音と父の「ただいま〜」という声が微かに聞こえてきた。それから程なくして「夕飯できたよ」と母が私の部屋のドア越しに声を掛けに来てくれたので、課題にキリをつけてリビングへと向かった。

我が家の食卓はいつも話題が絶えない。私は思春期と呼ばれる年代ではあるが、目立った反抗期もなく、父に対して距離を置くこともなかった。



この平穏な生活のありがたみを感じられるようになるには、私はまだ幼く、経験が足りないのかもしれない。



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