お兄ちゃんの友達の成くん

第1話

 今日はわたしのうちに、お兄ちゃんの親友の成《なる》くんが、夕御飯を食べに来ます。

 お兄ちゃんの昔からの友達が、今は私の高校の担任の先生なんです。

 びっくりでしょ?

 みんなには内緒にしてるの。
 説明がちょっぴり面倒なのと、私、成くんと二人だけの秘密にしたかったから。

 私とお兄ちゃんとは8コも年が離れてる。
 だから、必然的に成くん、土井成仁《どいなるひと》《《先生》》とも8コ差なんだ。

「成《なる》くん、いらっしゃい」
「お邪魔します」

 お兄ちゃんは夕飯の買い出しに出掛けていた。
 私は成《なる》くんと話したかったから、家に残っていた。

 うちは両親が早くに亡くなってしまい、それからずっとお兄ちゃんが私の面倒を見てくれている。

 あと……、いつも遊びに来る成《なる》くんが、私が小学生の時から勉強を見てくれるんだ。

「……成《なる》くん」
「ほら、香菜の好きなフルーツタルト買って来た。勉強したらご褒美に食べて良いぞ」
「ありがとう」
「今日は古文をやるか。苦手だろ?」

 成くんはいつもと変わらない笑顔。いつもみたいに私の部屋で勉強を見てくれる。

『――私、成《なる》くんが好きなの』

 私は、もうずいぶん前に彼に告白してる。
 びっくりした成くんの顔、その後照れた。
 ――返事は……。

「香菜、早く大人になれよ」
「それって……」
「待ってるから」

 手が震えた。
 シャーペンが上手く握れない。

 成くんから言って貰えたこと、思い出すと嬉しくてたまらないよ。

 期待して、良いんだよね?
 ――成くん。

 いつもと変わらない成くんの態度、私はいつにも増してドキドキしているのに。

「あんまりこっち見つめないでくれるか? ……照れる」
「あっ、私、ずっと見てた?」
「……うん、見てるよ。学校では気をつけてな! はい、香菜はノートと参考書の方を見て! 良い子の香菜は問題を解こうな〜」
「……なんかイジワル」
「なっ! な、なんで俺が意地悪なんだよ。香菜に見つめられると我慢が出来なくなっちゃうかもだろ。理性がぶっ飛んだらどうしてくれるんだ……」
「成くんっ」
「うわっ」

 私、成くんに抱きついてしまった。
 二人して、そのままじっとしてる。
 甘い沈黙が心地良い。

「……反則だぞ、コレ」
「ちょっとだけ。ねっ、土井先生」
「仕方ねえなあ。なあ、プライベートでは『成くん』って呼べよな。香菜」
「わざとだもん」
「はいはい分かってます。木根さん」
「あー! 成くんだって苗字で呼んだじゃん」

 冗談を言い合いながらも、くっついたままの私と成くん。

 成くんって、あったかい……。

 私達はお兄ちゃんの邪魔が入るまで、そうしてくっついていた。

 付き合うとかキスとかないけど、私は満たされた気持ちだった。
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