カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
「違いますよ。勘違いしないでください」

泣きそうになってることに気づかれないように含み笑いで言ったら、先輩は首を傾げた。

「私の担任はね、優しすぎるんですよ」

「優しい?」

「そう。一生懸命頑張る生徒の味方なんです。とっても素敵な先生なんです。そういう生徒に弱いから、テスト範囲のことなんて聞いたらうっかり深掘りしちゃうくらい、優しい人なんです」

「想像できるな」

先輩がフって小さく笑った。

キメの細かい綺麗な肌。
ニキビとかできたことあるのかな。

私は先輩のせいで眠れなくて肌だってこんなに荒れてるのにムカつく。

「試験期間じゃなければ聞いてますけど、さすがに期間中は…。だから誰かに教えて欲しくて、誰か居ればいいなーって思って行っただけです。それがたまたま本郷先輩だった。それだけです」

「なーんだ。残念」

「そう。残念ですね。それで?そんなこと聞く為にわざわざ呼び出したんですか?」

立ち上がりかけた私を制して、先輩は言った。

「特別再試を受けろ」

特別再試は、病欠とかやむを得ない理由で試験を受けられなかった生徒が補習や追試の前に通常通り試験を受けられるシステムだ。

学年ごとに別室に集まって、一日目に三教科、二日目に二教科の試験をする。
対象者は通常の授業を五時間目から抜けて別室に集められる。
みんなよりも勉強をし直す時間ができるわけだから、ラッキーって思う人もいるみたいだった。

「受けません。希望も出してないし」

「いいから。俺から言っとく」

「私だけ不公平じゃないですか。正直、ダルくてほぼズル休みだし。本当に病欠の人だって居るのに。ズルしても生徒会員だから?それとも「カナデ様」に贔屓されてるから?」

「ゴチャゴチャ勘繰るな。俺の責任だ。分かってんのか?再試は通常試験の結果は反映されない。でもそれを飛ばして追試までいったらお前の前回の成績はゼロだって反映されるんだよ。内申にも響く。黙って再試を受けろ。じゃなきゃ、」

「退学ですか?上等ですよ」

「ふざけたこと言ってんなよ!」

「ふざけてんのはそっちでしょ!?」
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