カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
「みんなはこんな俺を受け入れてくれた。ここに居てもいいんだって自信をくれた。それなのに俺はただもう一度砂雪に見つけてもらう為に、ここに居るって叫ぶように、立ち続けました。本当に最低です。でも、もう嘘はつきません。彼女に再会する為に生きてきた日々を間違いだったって思いたくないんだ」

私一人がうろたえていて、校長も理事長も、何が嬉しいのか自分達の席から私達に拍手なんかしちゃってるし…!

カナデくんが私の前まで来て、手を引いて立ち上がらされた。

「俺は砂雪の為だけに生きていく。誰かに嫌われても恨まれても、過去に怯えて八方美人するのはやめる。分かったんだ。砂雪に信じてもらえない未来なんていらない。好きな子が泣いてるなら一番の味方でいたい。だからお願いします。一生俺の隣で笑ってて。砂雪の居る美しい世界を見せてください」

キスをした。

カナデくんはみんなの前で。

歓声なのか悲鳴なのか判別のつかない声が体育館中に響いて先生達の拍手と、どこに隠していたのか、鈴城さんが唐突に鳴らしたクラッカーの音が小さく鳴った。
パラパラと散ったほんの少しの紙吹雪が、あの日の、カナデくんが見た景色を描けなかった画用紙に見えた。

「本郷先輩…」

「ふはっ…なんでまたその呼び方なんだよ」

「だってみんなの前…」

「分かった。二人の内緒な?」

「内緒?」

カナデくんが綺麗な口角を上げて笑った。

「名前。お前のことはもう内緒にはしない。愛してる」

「でもみんなの前でキモいことしないで…」

「ほんと、生意気だな」

またキスをした私達に、今度は全校生徒からの拍手が鳴り響いた。
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