俺様御曹司は逃がさない
VIPルームこと溜まり場へ到着したあたし。
開けたくないもドアをガチャッと開けて中へ入ると……九条の許嫁を囲うように皆がガヤガヤしていた。
あたしが中へ入ってきたことなんて誰も気付いていない。
・・・・アウェイ感半端ねえ。
「お、なっげえ便所だったな」
「もぉ、柊弥デリカシー無さすぎ~。ね?舞ちゃん」
「……はあ、ははは」
あの凛様でさえ許嫁に懐いている……恐るべし。
上杉先輩も前田先輩も普段より心なしか緩い気がする。
ここまで皆に好かれている九条の許嫁は、よっぽど好い人なんだろうなぁ。
それに、あたしに対しても全く敵意がないし。ほとんどの女があたしを敵視しているのにね。
随分と寛大な許嫁様……。
まあ、さっきの言い分的に、“お互いの親が勝手に言っていることだから、全く気にしていない”って感じだったしね。
・・・・んーー。なんだろう、少しモヤッとする……かも。
コンコンッ。
ノック音がして、全員がドアに注目する。そして、上杉先輩がドアを開けた。
「失礼致します」
・・・・え。
「やっぱそっくりだな、お前ら」
九条のその言葉であたしは理解した。
「叶様。私の弟……宗次郎です」