俺様御曹司は逃がさない
あたしの頭をポンポンッと撫でて、友達の元へ戻って行った拓人。

それを見ていた九条ファンが、廊下でザワザワし始めた。


「なによ、あれ」

「九条君が居ながら他の男?」

「柊弥君とあんな女……どう考えても釣り合わないよね」

「ビッチじゃん」

「特別可愛くもないのにー」


・・・・小声で言ってつもりなんだろうけど、丸聞こえですよ?貴女達。


「はいは~い、モブ共は解散かいさ~ん」

「言っとくけど、わたしの舞ちゃんは美人さんなんだから。貴女達なんて足元にも及ばないよ?鏡見てみたら?」

「ハハッ!!ちょ、美玖あんた辛辣~」

「梨花ちゃんが甘いんだよ。こういうのはハッキリ言ってあげなくちゃ。……まず、外面より内面どうにかした方がいいと思うよ?」


・・・・ブラック美玖の到来。


有無を言わせぬ美玖の瞳。

漆黒の闇に呑まれそうになるその瞳に、震え上がる九条ファン達はそそくさ退散した。


「わぁん。怖かったよぉ」


・・・・いや、どの口が言ってるんだ?

あなたが一番怖かったよ?なーんて、口が裂けても言わないけどね。

にしても、この調子だと卒業するまで九条を忘れることも、無かったことにすることも出来なさそうだ。


はぁぁ……憂鬱だなぁ。

大きなため息を吐いて、教室の窓越しに広がる眩しいほどの青空を、目を細めながら眺めるあたしであった……。

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