俺様御曹司は逃がさない
ベッドから立ち上がって、あたしへ手を伸ばしてきた九条。

そして、頭を撫でられた。

あたしはその大きな手をベジッと払って、九条を見上げながら睨み付ける。


「触んないで」

「……つれないね~。はい、これ」

「なにこれ」


渡されたのは1枚の用紙……契約書だった。


「俺にとっては遊びでも、お前にとっては遊びじゃねえだろ?口約束で……なぁんてわけにはいかないっしょ~」

「は、はぁ……」


契約書を読もうとした時、九条が急に大声を出した。


「っ!?ちょっ、なに?びっくりしたぁ」

「ハハッ。悪いね~!てか、時間ないからさっさとサインしてくれる?」

「いや、ちゃんと読まないとっ……」

「あーー、また時間ある時に読めばいいじゃん?大したこと書いてねーし。ささ、時間無いからとっとと書いた書いた~!!」

「ちょ、ちょっと……」


・・・・結局、契約書に目を通すこと無くサインしてしまった……。


「はいっ。これで契約成立ってことで!!あ、ちなみに俺のことは特別に“柊弥”って呼ばせてやるよ。大概の奴は“九条様”“柊弥様”もしくは君付けだけど~」

「なら、“九条”で」


あたしは何も迷うことなく即決した。

満面の笑みを浮かべ『九条』と言ったあたしに、驚いている九条。


「お前、マジでウケるわ」

「はは。そりゃどーも」

「ま、その呼び方で後悔しないように~」


ん?後悔……?

いや、別に後悔なんて一切しないと思うけど。


・・・・こうして契約をしたあたしは、九条との間に要らない主従関係を作ってしまったとさ……。

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