月の願いに愛をこめて

夏の風

 「涼花、もう着くからなー」
「はあーい」
青い空。車の窓を開け肘を置いている私に吹きそがれる冷たくて気持ちのいい夏の風。七月下旬にしては涼しくのどかな空気だった。
『海鳥』
高速道路の標識が私の目に留まる。
この標識を今までの夏に何回見ただろうか。
高速を降りてすぐ青くて透明で大きくて輝いている太陽に照らされ一定のリズムで揺れている海が目に留まった。小さいころから何も変わっていない安心感が私を覆い、そっと目を閉じて夏の涼しい風に癒された。
数分経つと、稲の田んぼや一軒家の家が見えてきた。またもや変わっていない海鳥の風景に安心しながら,車の窓を閉めた。
「涼花はほんと海鳥が好きね」
「んーまあね」
『海鳥』
この町はお母さんのうまれ育った町であって、いわゆる私のおばあちゃん家にあたる。少し家から遠かったり、両親ともに普段は忙しいため一年に一回。夏にしか帰らない。でも、前回の夏は受験勉強が忙しかったのがあって、一回も帰れていない。
そのせいで帰るのが久々で最後に来た海鳥の風景が変わっていないことが私を安心させた。

車でまた数分走ると川や山が見えてきて、小さい頃はよく遊んだなと思い出に浸るのも田舎ならではな感じがして楽しい。
車の中でお母さんの好きな音楽が流れている中、少しだけ窓を開けて涼しい風にあたった。
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