嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

「ドラゴンが繁殖期を迎えた。あろうことか町の近くに巣を作ってしまったから、巡回を強化している」
「ドラゴンが繁殖期を迎えるのと町の様子にどんな関係が?」

 リーゼロッテはその関係性が見いだせず、聞き返す。

「ラフォン領が時折、幻獣によって大きな被害に見舞われているのは知っているか?」
「もちろんです」

 リーゼロッテは頷く。
 ラフォン領に嫁いでから、一通り近年起こった出来事やこの地域の歴史については学んだ。その中に幻獣による被害の記録も幾度なく出てきた。
 それに、幻獣討伐の際のテオドールの鬼神のごとき活躍ぶりは、王都にいても聞こえてくるほどだった。

「それらのほとんどは、ドラゴンによるものだ」
「え? でも、ドラゴンって聖獣なのでは? 人を襲うのですか?」

 イスタールでは幻獣のうち人に害をなすものを魔獣、逆に信仰の対象となるような神々しいものを聖獣と呼ぶ。ドラゴンはその聖獣の最たるものだ。

「普段は標高が高い山の上に住んでいるから、人を襲うことはおろか出会うことすらない。だが、繁殖期だけは地上に降り立ち、気性も荒い」
「繁殖期……。もしかして、今日急に打ち合わせが入ってしまったのはそのせいですか?」
「ああ」

 テオドールは頷く。

「被害が出る前に予防策を打つ必要がある。今日中に、各地にドラゴンが繁殖期に入った旨の伝令を出す予定だ。それに加え、万が一ドラゴンが機嫌を損ねて来襲してしまった際の避難誘導などにすぐに対応できるよう、騎士を多めに配置している」
「そうなのですね」

 リーゼロッテは改めて町の様子を眺める。
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