嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
 一方その頃、テオドールは東部の山岳地帯にいた。昨晩遅くに発生した山火事は一時大きく広がったが、今はほぼ沈火している。

「ルカード、助かったよ」

 テオドールがぽんぽんと首を撫でると、ルカードはフンと鼻を鳴らす。

 今朝、現地に到着したテオドールは状況を確認してすぐに人の力で鎮火させるのは困難だと判断した。
そこで、ルカードに頼んで山の火口に住むサラマンダーの力を借りたのだ。火の精とも呼ばれるサラマンダーは、炎を自在に操ることができる。

 人間が助けを乞うても幻獣が協力してくれることはまずないが、ルカードが頼むと同じ幻獣同士ということでこうやって協力してくれることが多々あるのだ。

「さあ、戻るか」

 テオドールがそう言ったそのとき、遥か遠方から地響きのような音が聞こえた。

「なんだ? 屋敷の方角だな」

 音がした西の方角に目を凝らすが、肉眼では何も見えない。

〈ドラゴンの雄たけびだな。これは、相当怒っているぞ〉

「なんだと。ドラゴン? ……まさか」

 テオドールは ハッと息を呑む。
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