嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

第6話

   ◇ ◇ ◇

 初めて見るドラゴンは、リーゼロッテの想像より数倍大きかった。離れていても、優に数メートルを超える巨体であることは認識できた。全身が青光りする黒の鱗で覆われており、大きな翼は蝙蝠のようだ。

「きっとあそこにイラリア殿下がいるわ。行くわよ」

 リーゼロッテは乗馬するときの要領で手綱を引き、ヒッポグリフのわき腹を軽く蹴る。すると、ヒッポグリフは大回りしてドラゴンに背後から近づいた。

 リーゼロッテは身を乗り出し、目を凝らす。

「いたっ!」

 地上を動く小さな影が見えた。白のアクセントが付いた紺色のドレスは、今日イラリアが着ていたものだ。それに、近くにアドルフらしき人影も見えた。そして、イラリアは両手で丸いボールのようなものを抱えていた。

「あれは……卵? ドラゴンの巣から卵を盗んだの? なんてこと……」

 リーゼロッテはあまりの愚行に、片手で自分の口を覆う。卵を盗まれたら、ドラゴンでなくとも怒るに決まっている。

 怒り狂うドラゴンは、周囲の木をなぎ倒す。その木が、イラリア達がいるすぐ近くに倒れるのが見えた。

「危ないっ!」

 リーゼロッテの乗るヒッポグリフは急降下する。

「イラリア殿下!」

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