嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

◆ イラリア王女の策略

 
 イスタールの第三王女として生を受けたイラリアは、小さなころから何不自由ない生活を送ってきた。望めば叶わぬものはなく、何もかもが思い通りになる。

 そう思っていたのに──。

「今、なんと言ったの?」
「私には婚約者がおり、ゆくゆくは彼女の家を継ぐため騎士の職を辞するつもりだと──」

 俯き加減にそう答えたのは、最近イラリア付きになったばかりの近衛騎士だ。アドルフという名のこの騎士は名門ラット伯爵家の次男で、イラリア好みの人目を惹く美しい容姿をしている。さらには、限られた騎士にしか乗りこなすことができないヒッポグリフに乗ることもできるという。

(わたくしの近衛騎士にぴったりね)

 見目美しい男をそばに侍らせ、連れまわすのは気分がいい。イラリアは初対面のときからアドルフを気に入り、新入りにもかかわらず誰よりも彼をそばに置いた。

「お前はずっと、わたくしの近衛騎士でいることを許すわ」

 ありがたく思えとばかりに告げた言葉に対して返ってきたのが、先ほどのアドルフのセリフだ。

「どこの令嬢と婚約しているの?」
「オーバン公爵家のリーゼロッテと──」

(オーバン公爵家のリーゼロッテって……)

 何度か舞踏会で挨拶をされた記憶がある。たしか、凛とした雰囲気の美人で、多くの男性を魅了していた。さらに、彼女は才媛としても評判だった。

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