嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉

第2話

「それと、こちらに立っているのは部屋の護衛でございます。護衛は交代制で二十四時間おりますので、ご安心ください」
「そう。ありがとう」

 リーゼロッテの部屋の前には、騎士がひとり立っていた。
 薄茶色の髪に青い目の青年は、いかにも軍人らしい逞しい体つきだ。

(護衛っていうけど……、恐らく監視ね)

 リーゼロッテの実家であるオーバン公爵家にも二十四時間の部屋の護衛なんていなかったし、周りの友人の屋敷でも見たことがない。十中八九、自分の行動を監視するために置かれたのだろう。

「部屋については大体わかったから、何か困ったらお呼びするわ。少し休んでも?」
「もちろんです。テオドール様も間もなくお戻りになるはずですので、夕食はご一緒に」
「わかったわ」

 リーゼロッテはお礼を言って、部屋のドアを閉める。

 ようやくひとりになり、ほっと息を吐いた。
 リーゼロッテは部屋をぐるりと見回す。カウチソファーとローテーブルにドレッサー、それに執務机が置かれた部屋は、必要な物は一通り揃っていそうに見える。そして、部屋には出入り口の他にドアがみっつついていた。順番に開けてみると、ひとつは衣裳部屋、もうひとつはバスルーム、最後のひとつは隣の部屋へと繋がっていた。

(あっ)

 最後のドアを開けたリーゼロッテは、部屋を見てドキッとする。大きな天蓋付きのベッドは夫婦の寝室だろう。

(今夜からここで一緒に寝ることになるのかしら?)

 テオドールの前妻のことや、リーゼロッテの婚約破棄からあまり時間が経っていないことなどを考えて、リーゼロッテとテオドールは結婚式をする予定がない。王室の取り持った縁だったこともあり既に婚姻届けは提出されているので、一度も会ったことはないがリーゼロッテはテオドールの妻なのだ。
< 36 / 198 >

この作品をシェア

pagetop