嫌われ毒婦の白い結婚 のはずが、最強幻獣騎士様の溺愛が始まりました⁉
 イスタールの貴族の婚姻について定めた『国内貴族婚姻法』では、イスタールの貴族が婚姻を結ぶにあたっての様々な決まりが定められているが、そのうちのひとつに、こんな文言がある。

【貴族の本家において結婚後二年経過しても子供ができない場合、当主は無条件に離縁して後妻または後夫(こうふ)を娶ることを認める】

つまり、二年間経っても子供ができなければ、テオドールは有無を言わせずにリーゼロッテと離縁することができるのだ。

これは、子供がなかなかできずに後継ぎが生まれない貴族の家門を救済するために作られた条文だ。
事実、この制度のおかげで後継ぎを設けることができたと言っている人をリーゼロッテも見たことがある。

(まさか、旦那様は二年後に離縁するおつもりでわたくしとの接触を()っている?)

 一度そう考えると、そうだとしか思えなくなった。つまり、リーゼロッテに残された猶予はあと一年と十カ月である。

「よし。わたくし、決めたわ」

 出て行く身ならば、それに備えて色々と準備する必要がある。自身の生活の基盤を作らなければならない。                                                                                  
「え? 何か仰いましたか?」

 アイリスはきょとんとした顔でリーゼロッテを見つめる。

「やらなければならないことがたくさんだって言ったのよ。まずはそうね……町の様子を見に行こうかしら」

 リーゼロッテは腰に手を当てると、にこりと微笑んだ。
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