世界の果てで、君との堕落恋愛。
これまでわたしに関心のなかった人たちが、人気者に囲まれている地味子、というような絵を見たら興味を持ってしまうかもしれない。


……それだけはどうしても避けないと。

わたしのモデル活動が危うくなってしまう。

……と、ここまで考えたところで。


「……っふ、」


わたしはそんなことを思う自分に笑ってしまった。

お母さんにあれだけモデル活動を辞めろと言われたのに、なぜわたしは……。


最初は好きでも何でもなく、ただ自分の顔が良いということを利用して、涼太くんの治療費を稼ぐために始めた仕事だった。

可愛く着飾って、カメラに向かって最高の姿を見せて、キラッキラの笑顔を振りまく。

時には大人っぽく艶やかに、そして表情を歪めて苦しげな表情を撮る。

……ただお金を稼ぐためにやっていた仕事だったのに。

それがいつの間に、“仕事”が“楽しい時間”に変わってしまっていたのだろう。


今、確信した。

わたしは1人の芸能人として、涼太くんの治療費を必死になって稼いでいた1人のお姉ちゃんとして、この仕事を好いている。

自分でも気づかぬ内に、モデルの仕事が大好きになっていたんだ──。

……だけど、そう気づけた時にはもう遅い。

わたしにとってお母さんの言うことは絶対で、お母さんのことを困らせたくないから近々モデルを辞めることになるだろう。
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