世界の果てで、君との堕落恋愛。
そしてわたしは、荒んだ心を菅生さんに慰めてもらうために今ここにいる。

わたしのことを何でも知っていそうな菅生さん。その綺麗なアクアマリン色はわたしの心の全てを見透かしているんじゃないかとたまに怖くなる。


「そんな、おれはお礼を言ってもらえるようなことはしてな……」

「それでも、わたしは息がしやすくなりました。今はなんていうか、冷静になれています。モデルをもう1度できる確証はないですが、菅生さんが見せてくださったこの景色を見て少し元気をもらえました。だから、ありがとうございます」


わたしの口からつらつらと言葉が紡がれていく。

この感謝の思いを素直に受け取ってください、という意思のある目で菅生さんを見据えた。


わたしの瞳の中にいる菅生さんは珍しく狼狽えている。


「……刀利サンが元気になれたなら、良かった。どうしてもこの景色を刀利サンに見せたかったんだ」

「……ここは、菅生さんにとって何か思い入れのある場所なんですか?」

「うん。……落ち込んだり、悲しいことがあった時によくここに来るんだ。夏の間は蛍が見れるし、川の流れる音は穏やかだし、そういう自然の中にいると不思議と心が穏やかになる」

「菅生さんも落ち込んだりするんだ……」


わたしは思わず目を見張ってそう零した。
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