私の可愛い(?)執事くん
暁家

「なぁ、今度ここ行こうぜ」
「みんな、この日空けといてね」
4月末、クラスの話題はゴールデンウィークばかり。

「なぁ、暁。暁は何するんだ?ゴールデンウィーク」
「特に決まってないかな、
多分家でのんびりすると思う」
「えー、もったいねー!」
前の席の立川に聞かれて答える。
そしてまた前を向いて他のクラスメイトと
話し始めた。
(毎年のこととはいえ急なんだよな)

昨日の夕方、父から電話がかかってきた。
「どうしたの?父さん」
「陽、元気にやってるか?」
「うん、元気だよ」

「ゴールデンウィークの初日、
空いてるか?」
「うん、今のところは」
「母さんが源さんに挨拶に行くと言い出してな」
「わかった、聞いておくよ」
「頼んだ」
言うことだけ言って切ってしまった。
父は無口で表情をあまり表に出さない。

正式な執事になった年から祖父が様子を
見にきている。
最初の年は月に1回、翌年は半年に1回、
3年目から年に1回。

それが去年は両親も会ってみたいと言うことで
両親と祖父と俺。
(三者面談みたいで驚いたし緊張したし、
恥ずかしかったな)

お嬢様は大丈夫だと言ってくれて、連絡の電話をすると母が出た。
「もしもし、陽くん?」
「久しぶりだね、母さん」
「ちゃんと食べてる?体調は崩してない?
執事辛くない?いじめられてない?」
「食べてるし、元気だよ。
辛くないしいじめられてもないよ」
いきなりの質問攻めに呆れる。
(毎年の流れ)

「保護者とかで陽くんのことよく話題に上がってるのよ。よくできた息子さんで羨ましいわ〜とか。
でもそちらではどんな生活してるかわからないし」
(これも毎年の流れ)

「大丈夫だって。
みんなよくしてくれてるし」
「それならいいんだけど。
あ、お父さんから聞いた?
ゴールデンウィークに行くって」
「聞いたし、お嬢様にも確認したよ。
大丈夫だって」

「それなんだけどさっき思いついたことがあって」
「なに?」
「去年そちらにお邪魔してるし今年は家にご招待
しようかなって」
「・・・はぁ!?」
「いいと思わない?
1日だけでも女の子がいるってだけで私、幸せ。
陽くんじゃ物足りないってわけじゃないのよ。
あ、いっそお嫁さんに」
「切るね」
長くなりそうだからガチャ切り。

(後で謝っとこう)
ーお嫁さんにー
「まだそこまでの段階じゃないって。
告白すらしてないのに」

「陽、今いい?」
「はい!」
流石にこの距離じゃ聞こえないひとりごと。
なのに焦って大きな声を出してしまった。

「ご、ごめん。なにかやってた?」
「あ、いえ。すみません。考え事をしていて。
あのお嬢様、実はー」

「私が陽の家に?」
「すみません、母が勝手に。
もちろん例年通りここでやることもできますから」
「行ってみたい、陽の家」
「わかり、ました。伝えておきます」
こんなに早く決まるなんて驚いて返事がつまった。

母にメールしてしばらくすると電話がかかってきた。
「あら、そうなの?
ならおもてなしできるようにしておかないと」
声でわかる母のうきうきした様子。

「それで、父さんは大丈夫なの?」
「大丈夫。立ち上がってどこに行くのかとこっそりついていったらお義父さんに女の子は何が喜ぶかって
聞いてたから。楽しみにしてるのよ」
「ヘ〜、あの父さんが」
(俺ひとりっ子だし、女の子と接すること少ないから
入念に準備してるんだな)
そんな父を想像すると面白くて笑ってしまう。

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