身代わり同士、昼夜の政略結婚
1
「ミエーレ殿下、籠の用意ができました。どうぞお乗りください」

「ええ、今行くわ。ありがとう」


侍女の声に手探りで裾を手繰る。たっぷりとしたベールのおかげで、視界は薄暗い。


今日は一番高貴な色、白い色をした視界に淡く光が差し込んでいる。

お父さまにお会いするとき特有の、上等なベール越しの視界だった。


みの虫姫、というのがわたくしの俗称である。その名の通り、布でぐるぐる巻きにされた王女。


大陸には多くの国がある。それゆえに、どの国も特色がある。


我がアマリリオ王国は、大陸での通称を昼の国と言う。


黒は夜の色ではなく、一際濃い影の色を指す、決して日の沈まぬ国。


まばゆい金の国にあって、悲しいことにわたくしの目は一段と青く薄く、目隠しの布越しでなければ目を開けられない。

王国民にとって心地よい太陽光は、わたくしにとって、まばゆいばかりの強い刺すような光に感じられる。


顔を布でぐるぐる巻きにする以外、この十七年間、外に出る術がなかった。


ぐるぐる巻きの視界ではうまく歩けず、部屋の外に出るには籠や馬車に乗る。

部屋はわたくしにちょうどよい明るさにすると、王国民には怖がられる暗さをしていて、それもあって社交もままならない。ましてや婚姻など望めない。


自分がお荷物の姫である自覚はあった。
< 1 / 65 >

この作品をシェア

pagetop