身代わり同士、昼夜の政略結婚
しばらく揺られると、視界が少し明るんできた。おそらく、こちらの国の基準では、それはもう煌々と、まばゆいくらいの明かりを灯してもらっている。


人の目は、国によるのだという。特にその色が重要なのだそうだ。


終始明るく、色の細かな違いが分かる昼の国では、濃い色の目を持つ者が多い。

王族はその証の向日葵の目を持っているけれど、日差しをまぶしく思うことはあっても、前が見えないほどではない。太陽の愛し子であれば、きれいに透ける茶色の目をしている。

少しのカーテンや間取りの工夫によって、わたくし以外の王族は、ごく普通に外に出歩ける。


終始暗いものの、その中でも色の違いが見分けられるよう進化した夜の国では、明るい色の目を持つ者が多い。

明るい色の目の方が、暗くて黒っぽい色になってしまっていても、黒としてではなく見て取れるのだと言う。


夜の国での強い明かりは、昼の国での影の中、薄明かりと等しい。


かちゃりと部屋の扉を開ける音がし、ゆっくり椅子らしきものに下ろされた。上等なそれは随分と肌あたりがなめらかで、ふかふかなクッションに足が沈む。


わたくしを抱えたまま扉を開け閉めするなんて、器用な方なのね。


「ありがとう存じます」

「いいえ。お疲れのうえ、あのように暗いところでは、きっと心細い思いをされたでしょう」


向かいに座ったアステル王子が、私が至らなくて、と続けようとするのを、首を横に振って止める。


「充分よくしていただいていますわ。お手間をおかけしてしまったうえ、さりげなく連れ出していただきましたもの」

「遠いところからこちらに来ていただいているわけですから、これくらいはさせてください」


物腰柔らかな人だわ。

どこがどう捻れて、梟みたいだなんて猛禽類に例えられているのかしら。わたくしからは分からないけれど、お顔立ちが似てらっしゃるのかもしれないわ。
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