身代わり同士、昼夜の政略結婚
「殿下、アマリリオ王国のお花をありがとう存じます。何だか懐かしい心持ちがいたしますわ。お優しいお心遣い、痛み入ります」


間違っても我が国などと言わない。わたくしはもう、こちらに来た身なのだもの。


「お慰めになればよいのですが」

「もちろんですわ」


にこにこ笑い合ったところで、心を決める。


「恐れながら、質問をしてもよろしいでしょうか」

「ええ。何でもおっしゃってください」

「ありがとう存じます。……わたくしは、殿下の妻になるにあたって、明日から何をする必要がありますか?」


オルトロス王国について、簡単な勉強はしてきた。基礎的な知識から、少し推測できることはある。

けれども、暗闇は想像より深く、このような状態では役に立たない。


王子妃として役割を果たすべく、勉強や社交を優先すべきかもしれない。

殿下のお兄さま、王太子殿下にはお子さまがまだいらっしゃらないから、後継の問題はない。

むしろ、こちらが先では面倒も増えようというもの。時間がたっぷりある分、いろいろできるとは思う。


「前向きなお考えを嬉しく思います。特に決まりごとはございません。あなたと私は、いただいたこの二色の花のように、友好的であればよいのです」


隅々まで丁寧な殿下の言葉に、一つずつ頷く。


「まだ婚約者ですから、急ぐことはありません。まずは散歩をいたしましょう。あなたに、我が国を紹介させてください」

「お優しいお言葉をありがとう存じます」


ごくりと、息を飲み込んだ。
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