身代わり同士、昼夜の政略結婚
育った国が違うのですから、食べられないものがあることを、子どもじみた好き嫌いだとは誰も申しません。

文化の違いへの対応は、私たちの友好関係と同様に、互いの歩み寄りによって、双方の努力によって取り組んでいくものと考えます。


「ですから改善したいのです。私は、あなたに十全に回復してほしいと思っています」


言葉を尽くしてもらって、心配そうな眼差しを寄越されて、誤魔化せなかった。


「恐れ入ります」

「いいえ」

「ええと」

「はい」

「……お食事の味が、あまり、その……」


わたくしの好みは、長年の経験に基づいている。そしてそれは、オルトロス王国では、食事にかかわる人々の仕事を奪いかねない。


美味しいと言って食べていた手前、ものすごく心重いのだけれど、言うしかない。


「申し訳ありません。調理人に配慮してくださってありがとうございます」

「いいえ。かえってご迷惑をおかけしました」

「いいえ」


静かで確かな相槌ひとつ。それだけを落として、アステル殿下が微笑む。


公務で殿下がアマリリオ王国にいらしたときは、きっと物足りない味つけだったんだろうな。わたくしがこちらに来てからは、いろいろと調べてくださったんだろうな。


確かに心を砕いてもらっている。いつも、歩み寄りの兆しが見える。


この方は、あまりに丁寧で、あまりに優しい。
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