こんな雨の中で、立ち止まったまま君は

-3-


 2年前。

 一年間だけ、俺は圭吾と同じ大学に通っていた。


 圭吾と友達関係になったのは、

 授業が始まって一週間ほどが過ぎたころだった。


「あのさ、シャーペンの芯、持ってない?」


 圭吾らしいと言えば圭吾らしい。

「1本ちょーだい」がきっかけだった。

 たまたまその時隣りに座っていたのが俺だったのだ。


 それから同じ授業を受けるときには必ず圭吾が隣りにやってきた。

 最初は「慣れなれしいヤツ」程度にしか思っていなかったけれど、

 そのうち悪いヤツではないことに気づいた。


 お喋りは過ぎるけれど、気持ちのいいヤツだ。

 俺の口数が少なくとも、平気でガンガン話しかけてくる。

 そんなヤツは珍しかった。


 友達らしい友達がいなかった俺は、

 それから圭吾とよく行動するようになった。


 あのつまらない学生生活のなかで、

 それは案外救いだったのかもしれない。

 もしも圭吾と出会わなければ、大学をやめた今も、俺はこの町でひとりだったろう。

 
 俺は大学を1年で中退した。

 やめるのにこれといった理由もなかったけれど、

 それと同じくらい、大学に通う意味もなかった。


 本命校ではなかった。

 最も、他の大学に受かっていたとしても俺は同じ選択をしていたと思う。


 将来のことを考えて…みたいな理由で、

 就職に有利になりそうな資格のとれる大学を選んで受験した。


 いざ入ってみると、つまらないことばかりだった。

 そりゃそうだ。

 興味のない授業ばかりなのだから。




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