清くて正しい社内恋愛のすすめ
 取り急ぎ相田には、今穂乃莉と一緒にいるから安心して欲しいことと、東雲へのプラン提案は辞退したことだけを送信した。


 加賀見はスマートフォンをパンツのポケットにしまうと、穏やかな顔で眠る穂乃莉の顔を覗き込む。

 穂乃莉の潤んだ唇に無意識に唇を重ねそうになり、慌てて身体を引いた。


 『ねぇ加賀見……。まだ私と恋愛してくれる……?』


 そう言った時の穂乃莉は、不安を押し殺したような顔つきだった。

 もしかしたら穂乃莉は、今回の件でひどく自分を責めている加賀見の心の内に、気がついているのかも知れない。


「俺が責任を感じて、穂乃莉の側を離れていくと思ったのか……?」

 小さく声を出すと、穂乃莉は気持ちよさそうにこちらに寝返りをうつ。

 加賀見は、シーツの外に出た穂乃莉の手をそっと握った。


「お前はお嬢様でいれば楽なものを……。人の事ばかり思いやって、自分のことは後回しにする……」

 加賀見は握った手にギュッと力を込める。

 すると穂乃莉から強く握り返されたような気がした。


 加賀見は身をかがめると、穂乃莉の額に自分の額をコツンと当てた。

「だから俺は、お前のことをほっとけないんだよ」

 小さくそうささやくと、そのまま優しくキスをした。
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