清くて正しい社内恋愛のすすめ

「花音ちゃん……ありがとう」

　穂乃莉は思わず立ち上がると、花音をぎゅっと抱きしめる。

　花音が「加賀見さんに怒られちゃいますよぉ」と言い、二人は顔を見合わせると、ふふっと笑い合った。


「ところでぇ……」

　花音はにんまりと口角を上げると、穂乃莉の腕をツンツンとつつき出す。

「穂乃莉さんの幸せな顔の理由、そろそろ教えてくれませんかぁ？」

「ちょ、ちょっと花音ちゃん！？」

「さぞかし甘い時間だったんですよねぇ」

　花音は可愛らしく顎に人差し指を当てると、穂乃莉の顔を下から覗き込んだ。


　――こ、小悪魔だ。


　穂乃莉は顔を真っ赤に染めると、頬をぷっと膨らます。


「もう！　先輩をからかわないの！」

「穂乃莉さん、かわいい〜」

「ちょっと！」

「本当に穂乃莉さんって、ピュアですよねぇ」

「もう！　知らない！」

　穂乃莉はそう言い残すと、花音にこれ以上突っ込まれないために、慌てて会議室を飛び出す。

　追いかけてくる花音の笑顔を見ながら、穂乃莉はこんな風に向き合える仲間と出会えたことに心から感謝していた。