清くて正しい社内恋愛のすすめ
　やはり東雲は慣れているのか、動作は全てがスマートで洗練されていた。

　「出してください」という、東雲の声とともに、車は徐々にスピードを上げて、穂乃莉のマンションの方角へと走りだす。

　程なくして車はマンションの玄関前に到着した。

　穂乃莉は東雲に手を引かれ、車から降りる。


「穂乃莉さん。今日はお付き合いいただき、ありがとうございました」

　東雲の顔つきは、初めて会った時の様に穏やかだ。

「こちらこそ、お誘いいただきありがとうございました」

　丁寧に頭を下げた穂乃莉の前に、東雲がそっと手を差し出す。


「次はビジネスパートナーとして、お会いしましょう」

　穂乃莉は顔を上げると、その手をしっかりと握った。

「はい。次は御社まで、お伺いさせていただきます」

　穂乃莉のおどけた声に、東雲があははと笑い声をあげ、つられるように穂乃莉もくすくすと笑い声を立てる。


「では、おやすみなさい」

「おやすみなさい。お気をつけて」

　東雲は軽く手を上げると、潔いまでに爽やかな笑顔を残して、穂乃莉の前から去って行った。
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